中国酢都

鎮江三怪

鎮江は江南でよく見かけるような小さな町である。青々とした山と美しい湖水に恵まれ、まるで穏やかで上品な田舎娘のようだ。しかし、鎮江について語るとき「鎮江三怪」について語らないわけにはいかない。「鎮江三怪」とは、香酢摆不壊、肴肉不当菜、麵鍋里麵煮鍋蓋のことである。

第一怪:香酢摆不壊(放っておいても悪くならない香酢):

 鎮江香酢は中国内外で名声を博している。色合い、香り、酸味、純度、濃厚さ、この5つが大きな特徴である。色の濃さや味の良さ、香ばしくわずかに甘く、渋みのない酸味、長く寝かせれば寝かせるほど、味は良くなる。この香酢を調味料として使うと、味を引き立て、香りを増し、臭みを取り去り、脂っこさを消すことができる。それだけではない。食欲を増し、消化を助ける作用もある。

第二怪:肴肉不当菜(おかずとしては食べない肴肉):

 水晶肴肉(または水晶肴蹄、鎮江肴肉)は鎮江伝統の名物料理である。豚足を食材とし、硝石と塩で漬け込んだ後、ネギ、ショウガ、黄酒など数種類の薬味や調味料とともに、蓋をしてたっぷりのお湯でほろほろになるまでとろ火で煮込む。その後、冷やして煮凝りにしたら完成である。肉は赤く、皮は白く、光沢がきらきらとして、煮凝りの透明さはまるで水晶のようだ。「水晶」という美しい呼び名の所以である。口に入れると、肉の赤身は歯触りがよく、脂身はさっぱりとしていて、柔らかさ、香り、歯触りのよさなどの特徴を備えている。特に、薬味であるショウガの千切りと鎮江香酢の味わいは格別である。

第三怪:麵鍋里麵煮鍋蓋(鍋蓋と一緒に茹でた麵):

鍋蓋麵は鎮江の飲食技芸における一つの創造である。麵を沸騰したお湯に入れた後、小さな鍋蓋をお湯と麵の上に被せる。これにはいくつかのメリットがある。第一に、生めんを何回かに分けて投入することで、茹で上がった後にねばついたりバラバラになりすぎたりせず、麵の分量が統一される。第二に、麵を茹でるお湯がぐらぐらと沸騰するとき、表面に浮いている鍋蓋が灰汁を取り去ることで、スープの濁りを防ぐことができる。第三に、麵に火が通りやすく、芯が残ったりくたくたに茹ですぎたりすることを防ぐことができる。現地の伝統的な習慣では、客は店に来て麵を食べるとき、鍋蓋麵の上に乗せる具材としていろいろな肉や野菜を選べる。具材としては、豚ヒレ肉、豚レバー、牛肉、卵、タケノコ、ピーマン、センキュウ、青菜などがある。これらを茹で上がった麵にかけて、混ぜて食べるのだ。乾隆帝が江南を視察した時、鎮江でこの麵を食べ、その美味しさをしきりに褒めたというが、それも納得の味である。

鍋蓋麵については伝説があり、次のようにいくつかのバージョンがある。

 (1)むかしむかし、鎮江にある家族がいた。ある時、妻が麵を茹でるとき、うっかり竈にかけていた湯沸かし窯の蓋を麵の鍋に落としてしまった。ところがそうして茹で上がった麵は、硬くもなくなく柔らかくもない、ちょうどよい火の通り具合で、普段の麵より美味しかった。そこで、この家はほかの仲間と共同で麵屋を開いた。面を茹でる鍋の中に鍋蓋を入れる調理方法と、共同で店を開いたことから、麵屋の名前は「伙麵店」となり、茹で上がった麵は人々から「鍋蓋麵」と呼ばれるようになった。

(2)ある貧乏な家族がいた。あるとき、客人をもてなすために、家にわずかだけ残った面を茹でようとしたが調味料がない。さらにうっかりして麵を茹でている鍋のなかに鍋蓋を落としてしまった。ところが、思わぬことに麵が茹で上がる頃には部屋中に良い香りが漂っているではないか。実は、この家では鍋の蓋を洗ったことがなかったので、蓋の上に必要な調味料が全てくっ付いていたのだ。鍋蓋麵はこうして語り継がれることになった。

(3)伝説によれば、江南に下った乾隆帝は鎮江に至り、ある麵屋に光臨した。店の主人はとっさのことに慌ててしまい、小さな鍋蓋を大きな鍋の上に被せてしまった。しかし、思わぬことに茹で上がった麺はとても香りが良く、鍋蓋麵の名を得た。